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中村まり

08 / 3
at 5:19 pm

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Photo by Yusuke Kitamura

 続々と発表されるラインナップに中村まりの名前を見つけたとき、迷わずこの場所へ行こうと決めた。2005年に出演したジプシー・アバロンのライブを見ることはできなかったのだが、これを機に知ったのが彼女の『Seeds To Grow』というアルバム。英語詞ゆえに歌詞の意味を直感的に理解することはできなかったのだが、逆にそれが功を奏し、メロディーとともに流れるように体内へと溶け込んでくる。そうして繰り返し聴き続けているうちに、気がつけば4年の歳月が流れていた。

 2005年はひとりでの出演だったが、今回はギターに安宅浩司、バンジョーに原さとし、フィドルに岸本一遥という強力なサポート・メンバーが付き添っている。ジプシー・アバロンと比較するとステージはグッと大きくなったのだが、壇上の彼女に特別緊張した様子は見られない。淡々としているようにも見えたが、その声の柔らかみはCDでは伝えきれないもので、つま弾くギターもまた同様だ。そんな音色に誘われてステージ前に集まってきたのは、彼女のファンらしき人から、ヘブン色の強いヒッピー風の人、通りすがりの人、さらには後方の飲食店舗で接客をしていた出店者の姿まである。フォークやブルース、ブルーグラスといったジャンルに分類されはするものの、聴き手を選ばないのが中村まりの音楽の強みといっていいだろう。

 「こんなに温かく迎えてもらえるとは思っていなかった」、「この曲で踊れるかは分かりませんが……」。心地良い演奏とは裏腹に、曲間のMCではネガティブな発言が目立った。とはいえ、後ろ向きなのは言葉の表面だけで、言葉を発する彼女の表情は実に充実している。予期せぬ曲中の手拍子や、1曲ごとに届けられる温かな拍手に対する感謝の気持ちが、照れ隠しとなってそんな言葉になったのだろう。そんな空気を察したオーディエンスからは、MCのたびに穏やかな笑い声が漏れていた。

 手拍子や歓声、そして会場を漂う風にのせられ、流れるように演奏は進んでいく。4人全員の”Going Back To My Home”。安宅と原がステージを去り、フィドルからビオラに持ち替えた岸本とふたりで奏でた”Night Owls”。やがて岸本もステージ袖へと戻っていくと、ステージ上には中村ただひとりが残された。そんな彼女が最後に選んだのは『Seeds To Grow』に収録されている”Our Blue”。集まってくれたオーディエンスにひと言だけ感謝の気持ちを伝えると、テンポよくイントロを奏ではじめた。一音一音が実に鮮明で、音数の少なさから歌声がよりストレートに耳元へと届いてくる。この日に演奏されたどの曲よりも突き抜けた爽快さを感じたのは、長年歌い続けているからという単純な理由だけではないだろう。ステージとフロアの境界線を越えて生まれた一体感が、彼女の歌を後押ししていたように思えてならないのだ。CDだけでは感じ得られない瞬間に出会えるからライブは面白い。そして、世間的な知名度は決して高いとはいえない彼女を、こうした大舞台に抜擢してくれるフジロック。やっぱり面白いなぁ。

reported by org-funa

 

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1 Response to 中村まり

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11月 18th, 2019 at 11:30 AM

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