トリオ編成、持つ楽器もギターとベースとドラムで、そのロッキンな格好以外はさしたる特異も見られない。生まれ出る音がその想像を大きく超える代物になっているということ以外は――。
ギターの音程を分けるフレットが付いていないギター、それでいて音は的確にメロディを重ね、それを操る手は自在に動く。同じオーストラリア出身のジョンバトラーなどもリスペクトを送るという彼のプレイテクニックは、素人の目にも明らかな程の巧みの類で、得られる高揚感もまた味わい深い。
空はようやく晴れ間が差し、陽光は刺すようなまぶしさ。そして虹すら広げてみせたかと思えばまた小雨を落としたり、曇ってみたり。そんな変わりやすい空に負けず、地上の楽園のステージから生まれる音も表情は豊かだ。土っぽいフォークで音を紡いだかと思えば、持つ楽器が違えばメタルにすらなりうるスピーディーな音を3人で展開させたりする。持ち替えた膝置きギター、ラップスティールから生まれくる音にブレの無いサイドメンバーのプレイが合わされば、おのずとオーディエンスの数は膨らみ、その膨らみから手が挙がる。最後はそんな超絶のテクニックが会場の興奮をつかむだけつかんで振り切った形で終わった。
個人的に、あくまでプレイテクニックは2の次3の次と思っていた。世の中には基本的なコードを押さえてその上で極上のメロディーが走ったりすればそれでOKといったような名曲に今までたくさん触れてきたし、バカテクを売りにした音楽は果たして音楽と呼べるのか、などとすら思っていた。この日の彼のステージングをもってその閉塞的な考えをやめたいと思う。心躍らす指使いに、躍動感を、新たな発見を見いだした1時間であった。
reported by org-debu
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