BAD BRAINS

PHOTO BY HIROKI NISHIMURA

　とんでもないバンドがシーンに舞い戻ってきた。売れているかいないかではない、彼らの影響下にあるアーティストがどれだけいるか……あのビースティーズだって元はハードコア・バンドで、常にバッド・ブレインズにくっついていたという。

　歳を重ねてたたずまいはずいぶんと丸くなったが、バッド・ブレインズの代名詞である、「最速」の称号に相応しい何もかもを置き去りにするとげとげしいサウンド。オーディエンスがリズムをとろうとすれば、それは痙攣となり、まるでポゴダンスの様相を呈してくる。

　挑むオーディエンスを見下ろしながら、ヴォーカルのH.R.はマイクのそばから一歩も動かない。激烈なテンションで迫るビートが飛ぶ中にあって、ゆっくりと手を合わせ、言葉を吐いていく。緩やかな流れが彼を包み込んでいるかのようで、そのギャップから呪術的な雰囲気が立ち上る。

　レゲエやダブではゆったりとした、低く、太く唸るベースラインが内蔵に響き、スネアのショットはディレイがかけられて、ホワイトの闇夜にこだまする。緩急とは彼らのためにある言葉。備わっていたテクニックを速さで塗りつぶし、ワシントンDC〜NY中のライヴ・ハウスを荒し回ったラスタファリアンは、速さはかつてのままに、ルーツはさらに深く掘り下げて、シーンへと返り咲いたのだ。

reported by org-tiki